前回まで生地がどのように作られるかについて、一連の工程をひと通りお話ししてまいりました。
今回は、生地づくり編の締めくくりとしまして、生地に施される特殊加工についてご紹介致します。

言うまでもなく衣料品は、主として布帛やニット生地からつくり出されるわけですが、インナーからアウターまで着用の用途は多岐にわたります。当然のことながら、それぞれの用途に応じて要求される性能も異なってまいります。たとえばコートの場合は寒さを防ぐなどの機能が、肌着やスポーツウェアの場合は汗を吸い出して外気に発散させるなどといった機能がそれぞれ求められます。
これらの性能をすべて満たしていればそれに越したことはありませんが、現実には糸や生地だけですべての要求を満たすことはできません。着心地などある程度の性能については、素材開発や裁断・縫製でもカバーできますが、素材に由来する欠点の克服や縫製などでカバーできない性能においては、生地に施される特殊加工に委ねられます。

特殊加工は数多くあり、全部挙げるとキリがありませんので、代表的なものをいくつかご紹介致します。

  • 防縮加工
    生地は往々にしてタテ方向に引っ張られて仕上がることが多いため、できるだけ引っ張る力(張力)がかからない仕上げを行ったり、生地を押し込んであらかじめ収縮させたりする方法が一般的です。
    特に綿素材などの防縮に用いられ、着用時の縮みを抑えることができます。
  • 起毛加工
    生地を構成する糸の表面を針などで傷つけて毛羽立たせる加工で、柔軟性と保温性が要求される製品に用いられます。この内ピーチ起毛は、桃の皮のように非常に細くて短い起毛が特徴です。
    但し起毛し過ぎると生地の強度が低下するため、加工には注意を要します。
  • 柔軟加工
    繊維素材の風合いを柔らかくしなやかにする加工で、油脂や石鹸・合成樹脂などの薬剤が用いられます。
  • 吸水加工(吸湿加工)
    合成繊維にごく小さな孔を開けたり、水と結び付きやすい構造にしたりすることで吸水性を高める加工で、主に皮膚に触れる肌着や靴下、静電気防止機能を備える製品に用いられます。
  • 防虫加工
    特に毛製品はカツオブシムシなどによる食害を受けやすいため、これを防ぐために施されます。
    かつては素材に防虫剤や殺虫剤で処理していましたが、人体や環境に悪影響を及ぼしやすいため、最近はより危害の少ない薬剤(忌避剤)に取って代わっています。
    今日ではアレルギーの原因の1つであるダニ除けにも応用されています。
  • 衛生加工(抗菌防臭加工)
    肌着や靴下の着用時、とりわけ高温多湿の環境では、細菌やカビなどの微生物が、汗やアカなどを栄養として繁殖します。またそれらを分解することで、悪臭をもたらす物質も発生します。
    衛生加工は、薬剤を使用することで微生物の繁殖や悪臭となる物質の発生を抑える加工ですが、人体や環境に悪影響を及ぼす薬剤も多く、薬剤の選定には専門的な知識が要求されます。
    最近では、繊維に触媒を練り込んで悪臭物質を分解したり、悪臭物質を吸着させたりするなどの抗菌消臭加工も開発されています。
  • 樹脂加工(W&W加工・パーマネントプレス加工)
    シワになりにくくしたり、衣服の形態安定を図ったりするために、尿素(エマルジョン)やメラミンなどの樹脂を生地に付着させる方法で、主にワイシャツなどで用いられます。生地の段階で樹脂を付けて加熱させるプレキュア法、樹脂を付着させた生地を縫製後に高温高圧でセットするポストキュア法があります。
    かつては樹脂が分解されて発生する有害物質ホルマリン(ホルムアルデヒド)が問題になっていましたが、近年ホルマリンを発生させない樹脂も開発・使用されています。
    一方、合成繊維では熱によって変形する性質を利用してプリーツ(ひだ)やタックを付ける加工方法もあり、これを「プリーツ加工」と呼びます。
  • カレンダー加工(ティッシュ加工)
    主に合成繊維の生地を加熱した金属ローラーで圧縮し、織りまたは編み組織をつぶして生地を平らにすることで上品な光沢を出す加工です。
    「エンボス(梨地)加工」はこれを応用したもので、表面を凸凹に彫刻した金属ローラーを使用することで凹凸の生地を作ることができます。
  • コーティング加工
    生地にさまざまな物質を被ったり含ませたりすることで特定の機能性を持たせる加工です。
    • 防水加工・撥水加工
      水と相容れない素材を用いて水濡れや水の浸透を防ぐための加工で、傘やレインコートなどに用いられます。生地にビニール膜などを被ったり、素材にフッ素樹脂などを付けたりする加工法があります。
      その一方で、コーティング部分にごく小さな孔を空けるなどして汗や水蒸気を発散させることで、吸汗と撥水を両立させた加工もあります。
    • 防汚加工・撥油加工
      油分をはじき、汚れをつきにくくする加工で、汚れやシミがつきにくい製品に用いられます。フッ素系の物質で処理されることが多いです。
  • ラミネート加工(ボンディング)
    異なる生地やシート等を接着して貼り合わせる加工です。接着剤による貼り合わせが主流ですが、最近では熱による溶融を利用した接着方式も確立されています。さまざまな素材を貼り合わせることで、貼り合わせる素材同士の特徴を発揮することができます。
  • フロッキー
    毛羽状に短く切った繊維を電気的に生地上に接着させる方法です。柔軟かつ耐水性のある接着剤を塗り、その上に毛羽状の繊維を静電気で立たせて接着することで、プリント(捺染)とは異なる風合いを与えることができます。なお、接着後は必ずアイロン等で熱処理されます。

この他、太陽光の紫外線を吸収させるUVカット加工、遠赤外線を放射する物質を繊維に練り込んで保温性を高める蓄熱保温加工など、要求される性能が多様になるにつれて、生地に対する特殊加工もさらにバラエティを増しているのです。

以上をもちまして、糸と生地の加工に関するお話しをこれにて締め括らせて頂きます。

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