今回は染色に使われる染料についてご紹介したいと思います。

このニットリビアでも何度かご紹介致しましたが、繊維には綿などの天然繊維からポリエステルなどの合成繊維まで何種類もあります。当然ながら、これらに含まれる物質や組織もそれぞれ異なります。
そのため、使用する染料の種類も数千にのぼり、それぞれ素材の相性に応じて使い分ける必要があります。

化学の勉強になってしまいますが、染料には色を出すもととなる物質(発色団)・色のトーンを変えるもととなる物質(助色団)・水に溶けやすくするもととなる物質などからなっています。
特にスルホン酸(硫酸イオンを有する有機化合物)カルボン酸(酢酸などの有機酸)、それらのナトリウム塩(「えん」と読みます。ここでは化学反応でできた物質と思ってください)をもつ染料は水に溶けやすく、それ以外は水に溶けにくくなっています。
塩(えん)が水に溶けると、水溶液中で電気的に分離した状態となります。このような状態をイオンと呼び、電子を余分に取り込んだ状態のマイナスイオン(アニオン)と、電子を奪われた状態のプラスイオン(カチオン)とがあります。
塩素などのハロゲンと呼ばれる物質や酸素・スルホン酸・カルボン酸などがマイナスイオンに、ナトリウム・鉄などの金属水素などがプラスイオンになる傾向があります。

これとは別に、色の変わりやすさ(変わりにくさ)を表す指標として堅牢度(けんろうど)があります。
これは、汗・水道水・日光・クリーニング・アイロン・摩擦など、日常着用する時や洗濯する時などに受ける物理的・化学的作用に染料がどれだけ耐えられるかを示すものです。
堅牢度は使用される素材や染料との相性、生地の仕上がり具合などによって大きく左右されます。

これらを踏まえた上で、代表的な染料の種類をいくつかご紹介します。

  1. 綿・麻・レーヨンなどセルロース系の繊維と相性の良い染料
    • 直接染料
      セルロースを主成分とする素材や紙・パルプとの相性が良い染料で、前処理を行わずに直接染色できることから名付けられました。水中でマイナスイオンとして存在するため水溶液は酸性となり、また酸性染料として絹・羊毛・ナイロンの染色に使われることもあります(後述)。水に溶けやすいことから、水に濡らした場合の堅牢度が劣る欠点があります。
    • ナフトール染料
      ある薬剤を繊維にしみ込ませた後、別の薬剤を反応させて色を出す染料です。色が出た段階の染料(アゾ染料)は水に溶けないため、水に濡らした場合の堅牢度が直接染料より優れています
      なお一部のアゾ染料には、生理作用により発ガン性物質を生成するものもあるため、このような作用のあるアゾ染料の使用を規制する法律が2016年から施行されています。特定のアゾ染料の「不使用宣言」が重要となってくるのはそのためです。
    • 反応染料
      繊維と化学反応することで着色させる水に溶けやすい染料で、直接染料と同じく水中でマイナスイオンとして存在します。分子の種類や温度条件によって10種類以上のものがあります。鮮やかな色に染まり、水濡れや光に強いのが特徴ですが、塩素が含まれる水道水や長期保管による酸化、汗と日光との複合作用によって色褪せするものもあります
    • バット染料
      建染染料とも呼びます。染料自体は水に溶けないため、一度特殊な薬品を使って水に溶けやすくしてから染色し、その後再度化学反応させて水に溶けない染料に戻します。工程が煩雑になる分高価となりますが、水濡れを始めあらゆる堅牢度に優れています
  2. 絹・羊毛・ナイロンと相性の良い染料
    • 酸性染料
      絹・毛・ナイロンと相性が良く、前述の反応染料とほぼ同じ構造と性質をもちます。繊維に含まれるアンモニア成分とイオン結合して染色されます。
      水濡れや光への堅牢度を高めるため、クロムを含む触媒が使われることもありますが、染色後の液体に有害物質の6価クロムが含まれることがあるため、排水には注意を要します。
  3. アクリルと相性の良い染料
    • カチオン染料
      こちらも水に溶けやすい染料ですが、直接染料や酸性染料などとは逆に水中でプラスイオンとして存在するため、水溶液はアルカリ性です。
      きわめて鮮やかな色に染まるため、古代から綿の染色に使われていましたが、光への耐性が劣るため、パルプや皮革に限定されていました。しかしアクリルに染めると光に耐性があることがわかってきたため、現在はアクリル用として数種類の染料が開発されています。
      アクリルに含まれる亜硫酸成分とイオン結合して色が染まります。
  4. ポリエステル・アセテートと相性の良い染料
    • 分散染料
      染料自体が水に溶けにくいため、界面活性剤を用いて水中に染料を分散させることから名付けられました。水になじみにくいポリエステルやアセテートに相性がありますが、ポリエステルの場合は構造が緻密(ちみつ)なため、染色させるには100度以上の高温にするか、キャリヤーと呼ばれる特殊な薬剤を用いなければなりません。

先のキャリヤーを含めて、染色工程では色味を出したり均一に色を付けたりするなどの薬剤が使われることもありますが、こちらは次回にて紹介させていただきます。

ニットリビアの庭 ホーム