第50回・仕上げ工程とアイロンって何?

今回は、縫い工程を経て作り出された衣類を仕上げる工程についてご紹介したいと思います。

仕上げ工程とは、衣類をより美しく機能的に訴求できるように整える工程で、主としてアイロンやプレス機が使われます。
アイロンもプレス機も熱とスチームが用いられますが、これは衣類を構成する繊維には熱によって変形しやすくする性質があるためです。その性質は水分と圧力によって高められ、さらに水分には、熱をより広範囲に拡散させる作用も備えています。こうした原理を利用して、折り目を付けるべき箇所に折り目を付け、余分なシワをきれいに伸ばしながら衣類の形を整え、最後に冷却させて衣類の形状を固定させていくのです。

衣類の仕上げやシワを伸ばす器具としてよく利用されるアイロンですが、その習慣は1000年以上前からあり、中国においては「火熨」とも「熨斗」とも呼ばれていました。「火熨斗」として伝来した我が国では、この字に伸ばすという意味の「のし」が当てられ、これが慶事に使われる「のし」の語源とされています。
近世においては中に熱した木炭を入れて使用する炭火アイロンが使われましたが、西洋では生地を焦がしたり火の粉が飛び散ったりしないよう、アイロン専用のストーブも用いられていたそうです。その後時が流れて、現在の電熱式のアイロンへと変遷していきました。

こうして形状を整えて仕上げた衣類は、ブランドや使用素材などの下げ札を付け、シャツや肌着などは折り畳んで仕上げていきます。外観や寸法、それに汚れやキズなどがないか検査され、最後に縫い針などの金属類が紛れ込んでいないか検針機を用いてチェックされます。
量産で使われる検針機としてはベルトコンベヤー式が主流ですが、検針する方向と平行に針が紛れ込む可能性も考慮して、タテ・ヨコ方向に検針機を通すことで針混入のリスクを低減させています。コンベアー式で針混入の疑いがあるなどより厳格にチェックを必要とする場合には、ハンディタイプの検針機を用いることもあります。こうすることで、針混入による事故を未然に予防しているのです。
かくして出来上がった衣類が最終的に店頭に並べられ、我々消費者の手に行き渡るのです。

ここまで長きにわたって、素材となる繊維から衣類が出来上がるまでの工程を紹介してまいりました。糸にする紡績工程に始まり、編み工程織り工程で生地となり、染色工程で色付けされ、そして生地の裁断縫い工程を経て衣類が作り出されていくのです。
さらに需給状況に応じて、どんな衣類をいつまでにどれだけ作るべきか、そしてそのためにどんな設備が必要かも考慮しなければなりません。それだけ衣類づくりには非常に多くの手間と資源を費やしているのです。
海外から輸入される低価格の衣類が幅を利かせて久しいですが、このように膨大な作業工程を思うと、やはり衣類にもある程度の付加価値が付けられて然るべきだと思います。

これをもちまして、衣類の生産篇を締め括らせていただきます。