第28回 染色に使用する機械には何があるの? その1
今回は、染色工程で使用する機械についてスポットを当てていきたいと思います。
機械化が進む染色工程
現在のような大量生産が行われる以前は、すべて人の手で、かつ天然の素材を用いて染色していましたが、現在の時代にこれを行っていては膨大な人手がかかり、その分コストもかかります。
さらに染色工程はさまざまな染料や化学薬品を使用し、かつ生地の乾燥に大量の熱も使うため、これらが付着する(当たる)と、色素が染み付いたり、中毒症状ややけどなどを起こしたりして非常に危険です。つまりそれだけ人体にも地球環境にもかなりの負担となる工程と言えます。
これらの課題に対処すべく、染色工程でも機械化が進められてきました。
染色工程で使われる機械には、段階ごとに次のものがあります。
なお実際の機械の選定は、染色させる素材の性質はもちろん、水を含む原材料やエネルギーをどれだけ効率よく使うか、そして品質上どのような問題点があるかなどを考慮して決められます。
1.先染め用
第24回でも触れましたが、先染めは繊維から糸までの段階で染色を施すもので、段階に沿って「ばら毛染め」・「トップ染め(トウ染色)」・「糸染め」があります。
先染めの場合は、洗濯機のように孔を開けた容器(キャリヤー)に繊維や糸を詰め込み、そこへ染料を含む液体(以下染色液)を循環させて染色する「パッケージ方式」が主に使われます。
「トップ染め」の場合、繊維がこま状に整えられているので専用の棒が必要ですが、それ以外は概ね共通の機械が用いられ、これを「パッケージ染色機」と呼びます。
一方、糸染めの中でも「綛(かせ)染め」は、染色させる素材に応じて、染色液の入った容器に棹にかけられた綛糸を入れ、液体を循環させながら染色する「回転バック」、綛糸のかかった孔の開いた回転軸から染色液を噴射させ、綛糸づたいに液を循環させつつ、染めムラ防止のために糸も動かしながら染色する「噴射式綛糸染色機」が用いられます。
2.後染め(無地染め)用
生地を同じ色で染色する方法です。ここでは品質面に加えて、加工する量や製造コスト・納期などの生産上の問題を考慮して、バッチ(連続式でない)染色機・半連続染色機・連続染色機のいずれかが選定されます。
- バッチ染色機
一定量の染色させる生地と染色液を入れて、生地または染色液の一方もしくは両方を動かしながら染色を行う機械です。
ロープ状につないだ生地を染色液の中に送り込み、循環移動させながら染色する「ウィンス染色機」、染色液中で生地を巻き取りながら染色する節水省エネルギータイプの「ジッガ染色機」、孔の開いた円筒に生地を巻き付け、それを取り付けて染色液を循環させながら染色する「ビーム染色機」、生地や染色液を高速で循環させながら染色させる「液流染色機」などがあります。 - 連続染色機
生地の投入から取り出しまでの工程を自動かつ連続的に行う機械で、大量生産に向いています。主なものとして、染色を行う機械と水蒸気をあてて後処理を行う機械からなる「パッドスチーム染色機」、生地に染色液をしみ込ませて乾燥させた後、加熱させて仕上げる「サーモゾル染色機」があります。
ちなみに「パッド」とは、染色液または助剤などの薬剤に浸けた生地をローラーで絞りながら染料や薬剤をしみ込ませる工程を指します。 - 半連続染色機
染料やその他の薬剤をしみ込ませる段階までを連続して、後処理と発色を非連続で行う染色機です。代表格としては、反応染料を含む染色液をしみ込ませた生地を巻き取ってフィルムで覆い、室温で放置して固定させる「パッドバッチ方式」があります。
節水かつ省エネルギータイプで、染料や薬剤を均一に浸透でき、装置も少なくて済むため、多品種少量生産に向いています。
ここまで浸染用の染色機についてお話ししてまいりました。
プリント(捺染)用の染色機も様々な種類がありますが、こちらは次回に譲らせていただきます。