前回から衣類を作るにあたってのデザインについてご紹介致しておりますが、今回は、衣類のデザインを具体的にどうやって作り込むかについてご紹介致します。

あたり前の話ですが、衣類は身に着けるためのものですので、身体的・生理的な要素が備わっていなければなりません。また前回お話ししました通り、歴史・文化・社会情勢・色や形などといったトレンド・生産効率なども考慮に入れる必要があります。
これらの要素を総合したものを必要基本特性と呼び、次の通り分類されます。

1.実用特性
衣類を着用するのに必要な性質で、目的や用途によって次のものがあります。

  • 外観保持性;衣類の形態など、外観を維持する性質
  • 快適性;通気性が良くてムレにくい、保温性があるなど
  • 被覆性;形や寸法など、身体を適切に覆い被せる性質
  • 衛生性;不快な臭いを発生させないなど
  • 運動機能性;激しい動きにも対応できるなど
  • 丈夫さ;衝撃や摩擦などに強いなど
  • イージーケア性;シワになりにくいなど、手入れのしやすさ
  • 保管性;長期保管にも耐えうる、脆くならない
  • 安全性;かぶった際に首がきつくならない、薬剤などによる皮膚炎等が起きないなど
  • その他特殊機能性;耐熱・耐水・気圧変化など、上記以外で特に要求される性質

これらの実用特性は、作る衣類の種類によって、重点的に要求される特性がそれぞれ異なります。例えば、皮膚に直接触れる肌着ならば快適性・衛生性・安全性、改まった場所で着られるワイシャツならば外観保持性・イージーケア性、運動やスポーツで着用されるウェアならば、適度な被覆性・運動機能性・丈夫さなどが特に要求されます。
また「その他特殊機能性」が要求される衣類には、消防服・救命胴衣・ウェットスーツなどがあります。

2.情報性
衣類の美しさ・好み・新しさなど、主観的・情緒的効果を示す性質で、色・柄・形によって表現されます。

3.経済性
価格競争力が問題となる経済的合理性(コストパフォーマンス・初期性能の保持)と、価格に左右されない非価格競合性(ブランドの訴求力など)に大別されます。
モノ(ここで言うモノとは、サービス等の目に見えないものも含みます)造りには必ずコスト、つまり費用がついて回ります。製造するモノの有用性は、一般的には価格で数値化されますが、これをコストで割った値をコストパフォーマンス(略してコスパ)と呼び、これが大きいほど価格競争力が強いということになります。それゆえ、異なる工場で製造された同じ商品の場合、製造コストが低い工場のものほど価格競争に強いといえるのです。

どんなモノでもそうですが、デザインとは、作るモノの使用目的に応じて過不足のない性能を与える方法を決定することです。衣類においても、これら必要基本特性に基づき、種類に応じて適切な性能を与えなければなりません。そのため、衣類のデザインは次の手順を踏む必要があります。

  1. 製品のコンセプト(概念)を明確にし、そのために何を作るか具体的に決定する。
  2. 1.で決定された目的を達成するために必要な機能・性能を挙げて、それらを実現させるために最適な材料と構造・形態を選ぶ。
  3. 2.で選ばれた材料・形態に適合する製造方法、また設備や機械を検討し、決定する。

これらの手順において何より重視される基準は、合理性といえます。合理性とは、実用特性や情報性といった自然科学的法則にのっとり、なおかつコストパフォーマンスを最大化させることです。言い換えれば、自然科学的法則と経済的合理性とを調和・両立させることがポイントとなります。

ところで衣類は、人体(衣類によっては生体)に着装させる点で他の工業製品と大きく異なります。また、生地という平面二次元の材料を立体三次元の衣類に作り上げる点も大きな特色と言えます。その一方で、これまで述べてきました諸々の実用特性にも対応するだけでなく、使用する生地も作りやすく、かつ仕上がりの美しさも追求することが重要です。これを制服性(テーララビリティ)と呼びます。
そのため、衣類のデザインには、材料となる生地はもとより、衣類の製造に使用される裏地・芯地・縫糸などの性質も考慮に入れる必要があるのです。

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