第33回 衣類のデザインって何?
今回から章を改めまして、生地や糸からどのように衣類が作られていくかについて紹介してまいります。
衣類のデザインの基本
気候の変化・歴史・文化・社会情勢を抜きにできない
このニットリビアでも何度かふれましたが、人類には全身を覆う体毛を持っておらず、それゆえ気温や湿度などといった気候の変化に対応できないため、衣類がなければ人類は生き延びることができません。また地域ごとの気候もまちまちで、なおかつその地域の風土に基づく生活様式はもとより、歴史や文化・社会情勢なども大きく異なります。そのため、これらの要素を抜きにして衣類をデザインすることはまず不可能と言えます。
温度感や季節感・清潔感など視覚的イメージを強く引き立てる色
国際流行色委員会が「インターカラー」を選定
ちなみに、例年流行色(トレンドカラー)が発表されますが、これは実際の販売シーズンに入る2年前から、「国際流行色委員会」という機関によって「インターカラー」と呼ばれる色が選定され、その半年後には「日本流行色協会(JAFCA)」という機関にて、消費者が選ばれる色や生活のトレンド(傾向)も考慮に入れて選ばれ、発表されます。
発表される流行色は、衣類のデザインを決める上でも大きな影響力を持っているのです。
しかし衣類をデザインする上で必要なのは、こうした絶対的なものだけではありません。
現在は地球規模で資本主義が浸透して工業化が進み、中国・東南アジアを中心に衣類を始めとする工業製品が大量に生産されています。また、ここ20数年の間に急速かつ劇的に情報化が進展し、日夜さまざまな情報が素早くかつ多種多様に発信されています。その反面、昨今の地球環境保全をはじめとする持続可能性社会(サステナビリティ)推進の機運が高まり、より環境負荷をかけない素材や再利用しやすいデザインなど、環境や持続可能性における配慮も要求されつつあります。こうした事情も、衣類の付加価値を決める要素としてますます無視できなくなってきているのです。
現在のように著しく文明や経済が発展・成熟していくと、着心地や機能性・価格からファッションに至るまで、衣類に対する期待や要求は多岐にわたります。こうした要求は新素材の開発や生地の特殊加工で対応できるケースもありますが、根本的にはやはり衣類自体のデザインが重要となってきます。
長くなりましたが、衣類のデザインには、衣類そのものに要求される機能はもとより、地域ごとの気候や社会事情などといった要素はもちろん、流行や価格といった、エンドユーザーである我々消費者の要望も考慮に入れる必要があります。その上で、適正な生産数やサイズバランスなどを考慮に入れるなど、生産上の都合も含めて総合的に考慮することが肝要となります。